
あまりにすごすぎて、どこから話せばいいのか分からないほどに素晴らしいライブ映像です。
ジミ・ヘンドリックス以外にも、ドラム×1、ベース×1、パーカッション×2、ギタリスト×1の総勢5名が、1969年8月18日の「朝」から2時間近くに渡って繰り広げた演奏の「ほぼ」全貌が収められています。
「ほぼ」としたのは、もう一人のギタリスト、ラリー・リーがヴォーカルをとる「ジプシー・ウーマン」など2曲が入っていないからです。
(このDVDの発売前の情報では、「ジプシー・ウーマン」も収録される、とあったのですが、なかったことにされてしまったようです…)
2枚組ですが、どちらも同じ日の演奏を収録している点では同じです。
1枚目は本編的なもので、劇場用映画として複数のカメラを駆使して撮影されたカラー版です。
ただし、ライブでは2曲目に演奏されたという「ヒア・マイ・トレイン・ア・カミン」が未収録となっています。
ブックレットの解説によると、カメラ・クルー達はこの曲の演奏時をフィルムの交換に充てたから、とのことですが、しっかり撮影してほしかった、と思うのは私だけではないでしょう。
ちなみにこの曲はスロー・ブルースなので、恐らく白人のみで構成されたであろうカメラ・クルー達にとっては、興味が薄かったのかもしれません。
「ヒア・マイ・トレイン〜」と、ラリーがヴォーカルを取った2曲が収録されていないのを除けば、伝説のライブのほぼ全貌を追体験することが出来る、という点では素直によし、としましょう。
実際、とにかく圧倒的にすごい、としか言いようがないほどのライブなのですから…
ジミのギターの音は、とにかく大きく、かつ太い音色で、目立ちまくっていますね。
そのせいで、もう一人のギタリスト、ラリー・リーのギターの音が聞こえることはあまりなく、2人のパーカッションの音に至っては全くと言っていいほど聞こえません。
5人編成になったとはいえ、実質的にはトリオ状態、といえば言い過ぎでしょうか。
ただ、曲によっては(「ラヴァー・マン」、「ジャム・バック・アット・ザ・ハウス」、「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」)ラリーのギターもちゃんと聞こえるのがせめてもの救いかもしれません。
5人揃っての練習時間もそう取れなかったからか、ジミが思い描いていたであろう、5人の役割分担がきちんとなされているとは言えず、ラリーとのツイン・ギターも、先に挙げた3曲ほどでしか実現していませんが、それはそれで聴き応えがあるのは確かですし、何よりもジミはやれるだけのことはやった、という感じがします。
1曲目の「メッセージ・トゥ・ラヴ」では意気揚揚と始まるも、次第に険しい表情になり、「ヒア・マイ・トレイン〜」でのギターソロでは派手なアクションも交えつつ、激しいプレイを聴かせ、「ラヴァー・マン」の間奏部冒頭では、ラリーのリードギターに合わせて笑顔でステップを踏み(ただしすぐに真剣な表情に戻りますが)、「イザベラ」では歯弾きも披露し、「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」〜「スター・スパングルド・バナー」(アメリカ国歌)〜「パープル・ヘイズ」〜「ウッドストック・インプロヴィゼイション」〜「ヴィラノヴァ・ジャンクション」の20分以上に渡る途切れることの無い怒涛の演奏にはとにかく言葉が出ません。
唖然とさせられ、呆然自失させられたかと思えば、熱狂し、涙する自分がいるのですから…
「ヴィラノヴァ・ジャンクション」もスロー・ブルースといえる曲ですが、こちらは自己の内面に沈み込んでいくような沈鬱なものがあります。
キーがマイナーなのも、そう感じる一因でしょうか。
現在も手に入るはずのベスト版では「スター・スパングルド・バナー」(アメリカ国歌)のみを取り上げて名演扱いしていますが、やはり前後の曲の流れあってのものだと私は思うのですが…
ジミにしては珍しく、アンコールに応えて「ヘイ・ジョー」を披露しています。
ここでのジミの表情は、(先にも述べましたが)「やるだけのことはやった」という安堵感と、「やはりこのメンバーでは無理だったか」という諦めにも似た表情が見えるように思うのは気のせいでしょうか…
2枚目のモノクロ・ビデオカメラが撮影した「セカンド・ルック」と名付けられている方は、1枚目には未収録の「ヒア・マイ・トレイン・ア・カミン」が収録されているのが売りのようです(ただし、肝心の演奏シーンは気持ち少なめですが)。
全てそのモノクロ・ビデオカメラの映像のみで構成されているのではなく、カラーの映像もまじっています。どうせなら潔く全編モノクロ映像のみでよかったのに、と思うのですが…
各ディスクには、バンド・メンバー等の最新インタビューや1969年9月3日に行われた記者会見の映像などが収録されていて、ウッドストックにおけるジミの伝説的ライブの理解にある程度は参考になるかもしれません。
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